PEOPLE OF DAY & NIGHT [DAY] 平野紗季子
平野さん、どうして「ごはん狂」なんですか?
「私は福岡で生まれて、5歳の時、家族で東京に引っ越しました。福岡にいた頃はロイヤルホストが世界で一番のレストランだと思っていたのですが、東京にはそれを超えるような体験を与えてくれるお店がたくさんあり、衝撃を受け「レストランは夢なんだ!」と思うようになりました(もちろん今でもロイヤルホストは大好きですが)。週末になるとおのぼりグルメ的に話題のレストランへ家族で行くのが習慣になり、東京の食に魅了され、小学生の頃から食日記をつけるようになりました」
東京湾の美味しい思い出、おしえてください。
「勝どきや月島のエリアが大好きです。勝どきの海沿いは豊海水産埠頭という倉庫街。巨大なトラックなども多く停まっていて、非日常な場所です。倉庫街の一角にはマグロ卸しの会社が営業するマグロ丼の店があってすごくおいしいんですよ。そこから駅の方へ歩いていくうちにだんだんとタワーマンション群が現れ街がリッチな雰囲気を醸し出します。その反対側には東京オリンピック・パラリンピックの選手村も建築中。さらに月島方面に歩くと、味のある居酒屋さんが増え、一気に下町の空気に包まれます。道端で巨大な亀を散歩させている人なんかもいて(笑)。倉庫街から月島のあたりまで歩いて30分くらいなんですが、その中でも様々な時空が数珠つなぎされている感覚が面白いんです。そんな、時空のはざまを徒歩で超えていく瞬間にドキドキしますね」
平野さんは「海」は好きですか?
「海は普通です。すみません(笑)。東京は親水空間が少ないからですかね?文明は海や川など、水辺のそばで繁栄してきたっていうじゃないですか。でも現代的な生活を送っているとなかなか接点がないのが寂しいですね。でも京都へ行くと、街の中心地をどーんと鴨川が流れていて、人やカップルが等間隔に座っていて、川と人の関係性にとても魅力を感じますね。鴨川には恋の生まれる予感みたいなものを感じませんか?あの感じって東京の川ではなかなか感じられないかも」
そんな場所に、Hi-NODEはなれますか?
「日の出桟橋付近といえば、最近は芝浦ふ頭駅の近くに『THE GOOD VIBES』っていうパストラミ専門店がオープンしてわざわざ来ました。本場NY仕込みのすごく美味しいパストラミサンド。このパストラミのためだけにここに来る価値あります。テイクアウトして船旅するのもいいかも。『Hi-NODE』は美味しいパエリアのお店もできるとのことで賑わいそうですね。わざわざいく場所になると思うので期待しています」
[DAY] MODEL COURSE 浅草クルーズ編
1.道灌で浅草へ
日の出桟橋から船に乗って浅草へ。船は日によって変わります。今は「道灌」。船内は1920年代、アル・カポネが暗躍した禁酒法時代のアメリカをイメージ。隅田川を遡上するルートは近代化が進む東京と古き良き下町情緒を保つ江戸がせめぎ合うエリア。
「道灌」は屋上デッキもあり。開放感あるデッキで風を感じながら移動する楽しさよ。東京スカイツリーをバックに洗濯物がひるがえる古民家など、隅田川沿い下町の様子を見るのも楽しい。
船内で食べられるアイスはハーゲンダッツ。「間違いない」と平野さん大喜びで頬張ります。ワインレッドとダークグリーンが基調となったコケティッシュな内装と相まって、船旅気分は最高潮。
2.雷門と亀十のどら焼き
浅草の船着き場に降り立ち、平野さんの一言目が「亀十のどら焼き食べたい!」。船着き場から徒歩3分、雷門の眼の前にある「亀十」は行列のできる老舗和菓子店。並んでも食べたい名物がどら焼きです。
「亀十」のどら焼きは皮が美味しい!」と平野さん。小麦粉と砂糖、水と潔い材料で職人さんがひとつひとつていねいに焼きあげた素朴な焼き目が特徴的で香ばしくてもっちもち。あんは小豆で作る「黒あん」と、いんげん豆で作る「白あん」があり、平野さんは黒あん派。黒あんはほっこり炊いたつぶあんで上品な甘さ。ちなみに紙袋もかわいいです。
亀十|東京都台東区雷門2-18-11|03-3841-2210|10:00~19:00
3.花やしきで邂逅
「浅草花やしき」は1853年に開園した日本最初の遊園地。牡丹や菊が咲く植物園「花屋敷」としてのオープンし、江戸時代は茶人や俳人の集会の場でした。それから165年以上、浅草っ子たちを楽しませてきた遊園地は古き良き遊びがいっぱい。
浅草花やしき名物「パンダカー」に乗りました!パンダも平野さんもかわいい!「パンダの背中に乗って散歩する」という子供の夢と希望を叶えた乗り物。コインを入れると実際に運転することが可能。レトロな園内と相まってインスタ映えもグッドなスーパーカーに会いに来て。
浅草花やしき|東京都台東区浅草2-28-1|03-3842-8780|10:00~18:00(営業時間は季節・天候により異なります)
4.噂のホッピー通りで乾杯
浅草の昼飲みスポットといえばホッピー通り。大衆居酒屋が軒を連ねるこの通りは元々「煮込み通り」と呼ばれ、美味しいもつ煮込みが食べられる場所として有名でした。そして呑兵衛たちがビールよりも安く飲めるホッピーで「はしご酒」をしたことから、いつの間にか「ホッピー通り」と呼ばれるように。ホッピーは焼酎と割って飲むのが正統派。おすすめは焼酎とホッピーで1:5。上から注ぎ、泡立たせ、かき混ぜないのがポイントです。
今回立ち寄ったのは「居酒屋 浩司 浅草店」。定番の煮込みはもちろん、油揚げに納豆を入れてパリパリに揚げた「納豆あぶら揚げ」はこのお店のオリジナル。
ホッピー初体験の平野さん。「さっぱりしていて飲みやすい」とにっこり。アルコールが苦手な人も美味しく飲めるのが人気のホッピーは、ビールテイスト飲料と呼ばれる0.8 % 程度アルコールが含まれたものでアルコール濃度が自分で調節できる。浅草観光で疲れたときはキンキンに冷えたホッピーでブレイクしたい。
浩司|東京都台東区浅草2-3-19|03-3844-0612|平日15:00~23:00、土日9:00~23:00、祝日12:00~23:00|月曜定休(祝日の場合は営業、翌日休)
撮影:木村和平
平野 紗季子 Sakiko Hirano
フードエッセイスト。1991年福岡県生まれ。小学生から食日記をつけ続ける「平成のごはん狂」。学生時代から日常の食にまつわる発見と感動を綴ったブログが話題になり文筆活動をスタート。雑誌「Hanako」「POPEYE」などで多数連載を持つほか、イベントの企画運営・商品開発など、食を中心とした活動は多岐にわたる。著書『生まれた時からアルデンテ』(平凡社)。instagram: @sakikohirano
ACCESS
日の出桟橋「Hi-NODE」から船で浅草まで約40~45分。東京湾から隅田川を遡上。吾妻橋や清洲橋など歴史ある橋をくぐり、船上から東京スカイツリーなどを眺めることができる。料金は大人¥860、小人¥430。ホタルナ乗船の場合¥1,200、小人¥600。浅草・船着き場の最寄り駅は東京メトロ銀座線浅草駅徒歩1分。